真空注型とは
真空注型とはレジンキャストとも呼ばれ、真空に近い状態で型内に樹脂を流し込んで樹脂製品を複製する成型方法のことです。コストをかけずに精度の高い樹脂製品を成形するのに適した方法でもあります。
真空注型で使用する樹脂は粘度が高いものばかりで流動性が低いものの、真空状態を作って型内の空気を抜いてから樹脂を流し込むため、気圧差により型内の隅々にまで樹脂を送ることができます。
真空注型はシリコンゴムを用いた「ゴム型」と樹脂を彫り込んだ「プラスチック型」の2つに分けることができます。通常ならばゴム型を用いられることが多く、マスターの形状をそのまま複製する工法となります。一方プラスチック型は金型のようにマシニングセンターで作られます。
真空注型の特徴
真空注型は金型を製作せずに成形することができるため、少量生産時のコストを削減する設計や開発段階などの製造に向いているとも考えられます。しかし真空注型のゴム型やマスターサンプルは加工環境や使用環境の影響を受けやすいため、完成品の精度は切削品のように細かく成型できないという特徴もあります。
ただし、マスターサンプルの精度次第でエンボスなどの複雑な形状も忠実に再現することも可能のため、いかにマスターサンプルの仕上がりを良くするかによって完成品の精度が変わってきます。そのためマスターサンプルは光造形や切削で作成し、その後は熟練した職人のハンドワークによって丁寧に仕上げられることが多いです。
真空注型のメリット・デメリット
真空注型は簡易的なシリコンゴム型を使用されることが多く、短納期や低コストでの製造が可能です。また、素材は二液の熱硬化性ウレタンやエポキシなどを使用し、その物性の幅はとても広く、樹脂材料自体も着色できたりと成形品のバリエーションは非常に豊富です。
さらにインサートナットや端子を入れて成形することや、異なる材質の樹脂を一体にすることもできますので、様々な工業製品にも用いられている成形方法でもあります。
反対に真空注型のデメリットは、その工法から使用できる樹脂素材がウレタン系かエポキシ系に限られているため、強度テスト品の成形には適していません。また、ゴム型からは1型で約20ショットほどしか成形することができません。さらに透明品を作成したい場合は10~15ショットとかなり少なくなってしまうため、大量生産には適していないとも考えられます。
真空注型の工程
真空注型で製品を製作するときは、まずはじめにマスターサンプルを製作する必要がありますので、複製の元となるものを切削や3Dプリンタで作成していきます。
①出来上がったマスターサンプルをシリコンゴムで覆い、完全に固まったらシリコンゴム型を割ってマスターサンプルを取り除きます。
②マスターサンプルを取り除いた後は再びシリコンゴム型を復元し、バラバラにならないように固定します。
③出来上がったゴム型を真空炉の中に入れ、型内にウレタン樹脂などの材料を流し入れると、真空引きで細部まで樹脂が流れ込んでいきます。
④ウレタンが固まったらゴム型を割って複製された成型品を取り出します。もし精度が必要であれば仕上げ加工をおこなって完成となります。
真空注型の材質の種類
真空注型で使用される材質の種類をご紹介します。最も有名な材質は、硬度や耐衝撃性などの機械的特性のバランスが良く、樹脂素材の中でも最も安価で汎用的なABSライクでしょう。ABSライクの標準色はベージュ・黒・白の3種類となります。
また、真空注型で使用される樹脂の中で最も柔らかく弾力性があるPPライクという材料が使用されることも多いようです。さらにPPライクは曲げや引っ張りの力に対して強く、硬度を変えて半硬質な製品も作ることができます。
透明な成型品を製造したい場合は、靱性がある透明ABSライク(ウレタン)を利用します。さらに透明度が非常に高いアクリルライク(エポキシ)を使用しますが、割れやすい特徴もあるため、成形品の取り扱いには注意が必要です。