鍛造用金型とは
鍛造とは工具や金型を用いて固体材料の一部や全体を圧縮または打撃で成形することをいいます。金属に圧力をかけると金属が鍛えられ、強度が格段に増すという特徴がありますので、自動車部品や産業用設備、航空機や船舶などの重要保安部品の製造に使用されています。
鍛造には人の手で成形する「自由鍛造」と金型で成形する「型鍛造」の2種類があり、型鍛造は圧延鋼材から適当な長さに切断されたビレットと呼ばれる素材を製品の寸法に合わせた金型で圧力をかけて製品を作る方法です。
鍛造用金型は寸法精度が高く複雑な形状を背早く成形することができるため、小型の製品の大量生産に向いていますので、自動車のクランクシャフトやコンロッドなど強度が求められる部品の製造に使われています。
鍛造用金型の種類
鍛造用金型は「熱間用金型」「温間用金型」「冷間用金型」の3つに分けることができます。
熱間鍛造用金型
熱間型鍛造では鋼材を再結晶温度以上に加熱するため大きく変化することができるため、より複雑な形状を作ることができます。しかし高温状態からの冷却による熱収縮や黒色酸化鉄被膜(スケール)が発生するため、寸法精度が落ちて表面が綺麗にならないという欠点があります。
また熱間鍛造は非常に高温のビレットを圧縮成形するため、熱的負荷の影響が大きく金型の摩耗が早く、数千ショット~数万ショットで寿命を迎えてしまいます。
温間鍛造用金型
熱間鍛造と冷間鍛造の長所を併せ持った温間鍛造をおこなう時に使用する金型です。冷間鍛造よりも複雑な形状の成形が可能で、型の寿命も熱間鍛造より長い特徴があります。
冷間鍛造用金型
常温の環境下で金属に圧力を加えて成形する加工方法で、金属の塑性を利用して加工するため塑性加工とも呼ばれています。製品にバリなどの材料ロスをほとんど発生させず高速に加工することもできる特徴があります。
冷間鍛造用金型で成形された製品は熱収縮やスケールが生じないため、表面の精度もよく機械加工での仕上げもほとんど必要ありません。また高温のビレットを加工するわけではないため金型の寿命も長く、数万ショット~数十万ショットと非常に高寿命でもあります。
ただし、常温で成形できる形状には限界があるため、大きなビレットであれば変形抵抗が大きく金型が破損してしまう可能性もあるため、ボルトやナット、歯車など小型で強度が求められる部品の製造に使用されます。
さらに1回の塑性変形には限度があるため、金型を製作しても角やR形状の仕上がりには制約があます。そのため複雑な形状を成形するには複数の金型が必要で、その分採算性が悪くなるというデメリットがあります。
型鍛造の方法
型鍛造の方法も「半密閉鍛造」「密閉鍛造」「閉塞鍛造」「中空鍛造」の4つに分けることができます。
半密閉鍛造
一対の金型でビレットを押し付けて高さや大きさを変えたり一部を盛り上げたりします。型の隅々までビレットを流し込み欠肉を防ぐため、成形後はバリが生じます。
密閉鍛造
上型から下型まで隙間なくで密閉してビレットに圧力を加えて成形します。成形できる形状が限られるため丸ものやボルトの頭部形状の成形に使用されます。
閉塞鍛造
型に入れたビレットをパンチと呼ばれる工具で押し込み圧力をかけ、金型全体に流動させます。パンチの形状や数によって複雑な形状を成形することも可能です。丸ものに複数の軸がついた形状やフランジがついた部品も作ることができるため、自動車の車軸の継ぎ手部品の製造に使用されています。
中空鍛造
上下の型を閉じ込めた後、成形ピンを挿入して中空状態を成形します。水平方向からだけでなく、上下2方向からも成形ピンを挿入することで複雑な形状の成形や複数部品を一体化することができます。