歯車加工とは
歯車とは、複数の歯が噛み合って動力を伝達するための機械部品の一つで、減速や増速、回転軸の向きや回転方向を任意の方向に変えたり、動力の分割に用いられます。さまざまな機械に用いられる歯車は時計や電子機械といった小さなものから産業機械やプラントなどの大きな機械にまで活用されており、世の中にある動力機械のほとんどで使用されている機構といっても過言ではありません。
歯車の種類とその特徴
歯車は紀元前のローマやエジプトなどで水を汲むための装置に採用されていたのが始まりで、やがて時計や天文計算機などにも使用されるようになったと伝わっています。特に15世紀後半には現在の歯車の原型となるほとんどが考案されていたという記録があります。
そこで現在使用される代表的な歯車の種類や特徴をご紹介します。
かさ歯車:ベベルギア
ある1点で交わる交差軸の回転・動力の伝達には、かさ歯車と呼ばれるベベルギアが使用されます。また、歯のねじれの有無によって「ストレートベベルギア」や「スパイラルベベルギア」にも分けられます。
ストレートベベルギアは比較的製作が容易という特徴があり、スパイラルベベルギアは製作が難しいものの、強度・静粛性があるため高負荷・高回転向きといった特徴があります。
はすば歯車:ヘリカルギア
歯筋がねじれているギアをいいます。平歯車よりも強度があり、静かな歯車であるため産業機械や自動車など比較的高負荷なものに使用されています。ただし部材の長さ方向に生じる応力であるスラスト(軸方向力)が発生するため対策が必要なこともあります。
ひら歯車:スプルーギア
平行な2軸の回転・動力の伝達に使用されます。スラスト(軸方向力)が発生せず最もスタンダードな円筒歯車で製作が容易などの特徴があるため、動力伝達用の歯車として多く使用されます。
ラック、ピニオンギア
刃筋が直線で平歯車と噛み合う棒状歯車のことをいいます。円筒歯車のピッチ円筒半径が無限大になったとも考えられるため、棒状歯車と呼ばれるラックは何本もつなぎ合わせて長くすることも可能です。そのため製造現場などの搬送装置に使われることが多いようです。
ウォームギア、ウォームホイール
ネジ状の歯車であるウォームギアと噛み合うねじれを持ったウォームホイールが組み合わさったギアがセットになったものをいいます。1段で大きな減速比を得ることが可能ですので、大減速させたり高トルクの動力を伝達するために使用されます。
内歯歯車:インターナルギア
平歯車と噛み合う円筒または円すいの内側に歯が作られている歯車のことをいいます。内歯車と対になる歯車は必ず外歯車となり同方向への回転を伝えます。主に減速機に使われることが多く、歯車装置をコンパクトに設計することもできます。
主な歯車の材質
さまざまな用途に使用される歯車は鉄系材料や非鉄系金属材料、プラスチック材料などいろいろな材料で製造されます。機械系の部品には「機械構造用炭素鋼」や「機械構造用合金鋼」などの高硬度の材料が使用されます。また、食品機械などの耐食性が求められる機械に対しては「ステンレス鋼」が使用されます。
金属材料で製造された歯車は所要の組織及び性質を与えるために熱処理がおこなわれます。特に加熱後に冷却された金属は組織や性質が変化してさらに強度を増しますので、鋼の持っている性質を十分に発揮することができるのです。
熱処理の種類もさまざまで「焼きならし」「焼きなまし」「焼入れ」「焼戻し」「表面硬化」などに分けられます。
歯車の利用用途
歯車は機械の内部にあるため、普段あまり目にする機会が少ないものの、生活する上では欠かせない機構ともいえます。また歯車は噛合う歯によって回転軸の方向を一軸から多軸へ伝達したり、歯数を変えることで大きな力に変換することができる便利な機構ですので、多くの利用用途があります。
例えば、自動車のトランスミッションやデファレンシャルという機構にはヘリカルギアやべべルギアが多く使用されています。また、ハンドルを回すと丸ラックが回転するカメラの三脚にはラック・ピニオンギアが採用されています。
さらにオルゴールの内部では、ウォームギア・ウォームホイールが使用されており、ウォームホイールからドラムを回転させて音楽を奏でていたりと、私たちの身近なものにも使用されています。