バネ加工とは
まず初めに、バネとは金属の弾性体の復元力を利用して弾性エネルギーを蓄積させるものをいい、力を加えて戻ろうとする力を利用するために使用されます。主に可動部分に外部エネルギーを与えず自動で元に戻る機構や、ショックを吸収するクッション的な役割を担っていますので、自動車や精密品の構成には欠かすことができない部品ともいえます。
そしてバネ加工は、一般的にピアノ線やステンレス線、硬鋼線などの材料を使用し、コイリングマシンという設備を利用して指定の形状に仕上げていきます。バネ加工は使用する用途によって品質を保つのはもちろん、材料選びの際は製品自体のコストにも影響を与えるため、非常に重要な工程でもあります。
また、バネ加工は成形後にショットピーニングによる対疲労性の向上や、メッキ処理によって耐食性の向上など、後の工程によって様々な特性のバネを作ることができます。
バネの種類と用途
バネは必ずしもコイル状に巻かれた形状のものだけでなく、製品の目的や形状によって棒状や板状など様々な形状があります。それぞれ用途が異なるためご紹介していきます。
押しバネ
押しバネとは、バネが圧縮する方向に荷重を受けると反発力が発生するコイルバネの一種となります。バネの中でも最も使用頻度が多く、様々な長さや大きさがあります。素材によって反発力も変えられるため、主に衝撃や振動を抑えるクッションとしての役割を担うことが多いでしょう。そのため、自動車やオートバイのサスペンションや、エンジン内部のバルブを動かす機構などに使用されています。
引きバネ
引きバネは伸びる方向に荷重を受けた時に反発力が発生するバネのことです。押しバネとは反対に作用するといえます。引き方向に作用するため、バネの両端に垂直方向のフックが付いており、自転車のスタンドや軽量器などに利用されます。
トーションバネ
製品を両端に取り付け、ねじった時の反発力を利用するバネのことをいいます。棒状の形状をしているため一見バネとは思えないこともあるでしょう。コイルバネと比較すると保存できるエネルギーが大きいため軽量にすることが可能です。また、バネの形状も自由に変えられるため設計に自由が効くというメリットもあります。
板バネ
留め具のような形状をしている板バネは、コイルバネよりも複雑な形状にすることができるため、少量生産やオーダー品にも対応しています。また、板バネは「重ね板バネ」や「薄板バネ」の2種類に分けることができます。
重ね板バネは強度を補うための役割もあるため、トラックなどの貨物車のサスペンションにも採用され、振動を抑えるクッションのような働きを担っています。一方、薄板バネは使用目的によって様々な大きさに作ることができるため、スイッチの切り替え部やパソコン、プリンタなど精密機器の部品にも対応しています。
線細工ばね
線細工ばねは「ワイヤーフォーミング」とも呼ばれ、ワイヤー用途や形状によって様々な形状に加工して製作するため、決まった形というものはありません。一般的にはマルチフォーミングマシンで製造しますが、加工方法も決まっておらずプレス加工や溶接加工をして製造することもあります。
線細工ばねは押しバネや引きバネのように繰り返し荷重を受けるような動的な使用は少なく、取り付け位置を保持するように静的に使用することが多いため、指定荷重が定められていないのも特徴です。
バネ製造設備の色々
バネの製造工程は、コイリングと呼ばれる成型工程から熱処理、研磨など様々な工程を経て完成しますので、コイリングマシンや熱処理機、研削機能など複数の製造設備を使用して製造します。
また、コイリングによって様々な大きさや形状のバネを成型するため、コイリングマシンも様々な種類があります。例えばNC機構(プログラム制御)によって自動で成形するNCコイリングマシンや、大型のバネを成形するための大型コイリングマシン、精密バネの両端を研削する自動研削機などが代表的な製造設備でしょう。