プレス加工とは
プレス加工とは、パンチ(雄型)とダイ(雌型)1対の金型で材料をはさみ、加圧して穴あけ、切断、曲げ、伸ばし、絞り成形し、その形を永久に維持する加工方法のことです。加圧する機械をプレス機と呼び数トン〜数千トン(tF)と大きな力が加えることが出来ます。
今から200年以上前の1795年には水圧を利用したプレス加工が行われていました。プレス加工は他の機械加工と比べ短時間で加工できるので生産性が高く、連続加工も可能であることから大量生産に向いています。
産業の発展に大いに貢献してきた加工方法と言えます。自動車、家電、産業機器において、プレス加工によって製造された部品の多くが筐体やフレームなど構造要素としても用いられており、モノづくりの世界で大活躍しています。
プレス加工の大きな特徴を挙げると次の通りです。
・材料は主に金属です。
・プレス機に金型をセットして加工します。
・金型で材料をはさみ大きな力を加えます。
金型とは
材料に上方向から力を加えて、穴あけ、切断、曲げ、伸ばし、絞り行い目的の寸法に成形、保持する工具の事をプレス金型と言います。
大きく区分すると単発型、順送型、トランスファー型の3種類です。
単発型
プレス機が上下に動く1ステージ1つの工程のみ加工を行うためのプレス金型です。人が手でプレス機を動かし、材料を供給して作業することを前提に作られた金型で、自動化などはされていません。
順送型
1つの金型の中に複数の工程を均一に配置し、ステージ毎にワークを順次送って加工する金型です。材料は、ロール材を使いレベラーなどで平らにして供給します。人の手による材料のセットが不要ですので大量生産向きですが、金型が複雑になるので初期費用が大きくなります。
トランスファー型
ワークを順に搬送(トランスファー)していくことで自動加工を実現したもので、基本は単発型と同じです。ワークの金型間の移動は、搬送装置で送っていくため、人の手を使わずに自動でワークが次の工程に流れます。
プレス加工のメリット・デメリット
プレス加工のメリット・デメリットは次の通りです。
メリット
・大量生産向き
・品質の安定
一度金型を作ってしまえば、安定した品質の製品を大量に作ることができますので、プレス加工のメリットはなんといっても大量生産に向いているということです。
熟練した職人でなくてもばらつきがでない、作業の質を一定に保つことができます。
デメリット
・形状の制限がある
・初期費用が高価
プレス加工には、物理的制約がある為、成形できる形状に制限があります。どんな形状にも加工できるわけではなく制約にのっとって設計する必要があります。これには、設計経験を積むなど技術の学習が求められる分野と言えます。
また、金型製作が高価になるデメリットがあります。単発型でも、工程数によっては十数万円から百数十万円。順送型で数百万円の金型製作費が必要となります。
設計変更による金型の改造費も発生してしまう為、板金加工で繰り返し試作を行い金型改造しなくて良いよう見極めが必要となります。
プレス加工の種類
プレス加工は、弾性と塑性、加工硬化、加工前後体積一定これらの3つの原理の組合せですが、代表的な加工の種類を挙げますと次の通りです。
せん断加工
せん断加工とは、板状の材料を上から加圧プレスして、完全に切断し分離する加工法のこと。切り抜いたり、外形を抜いたり、穴をあけたりすることもこの加工法に含まれます
曲げ加工
プレス金型で材料を曲げる加工法のことを言います。板状の材料をプレスし、被加工材の引張り力と圧縮力を利用して、材料を曲げるものです。曲げた鋼板がわずかに戻るスプリングバックを考慮して金型を設計する必要があります。
絞り加工
板状の材料にプレス機で圧力を加えパンチとダイに沿った形状にする加工法のことを言います。身近な例では、鍋やスマートフォンのバッテリーパックなどの加工で底があるコップ状容器に形状になります。
普段の生活の中のプレス加工品
・自動車の車体(ドア、ボンネット、フレーム、フェンダー、ホイルなど)外装部品
・家電筐体(外装)部品、内部の構造物(フレームなど)
・電子機器(HDD構造部品、パソコン筐体、フレームなど)
・生活用品(鍋、スプーン、フォーク、ナイフなど)
・建築資材(ドアノブ、天戸、物置など)